第17章 ❄ フラッシュバック
「んなあァァァァッ!!!」
その日の午前、国語の授業で百人一首を読み解く、という普通の授業を受けた ヒーロー科の生徒達。
休み時間になり教師が忘れていった小倉百人一首を見つけた雪は小学校で大会があったことを懐かしく思い、できる人はいるかと呼びかけたところ、爆豪が学年で1番強かったという情報を緑谷から得たのだ。そんなことを聞いては例え相手がどんなに話しかけんなオーラを出していようと 勝負だ、と組み付くのがこの他称コミュ力お化けの雪である。
『やったー!1枚差で私の勝ちっ!わぁーい!』
自信満々に挑んだ勝負で負けることはかなり恥ずかしいものだ。しかし【完全記録】の個性をもつ彼女が負ける可能性はかなり低いことは言わずもがなであり、よってなんの心配もなく(ウザがる爆豪を煽りに煽ってやっと)始めたのだ。
ところがである。
思えば彼が、何をさせてもそつなくこなしてしまう''才能マン''であることがクラスメイトに認知され始めたのはこの頃だったかもしれない。
試合中、雪は焦った。それもかなり。
爆豪をその気にさせる為とはいえ、あんなにも皆の前で煽りまくったのだ。絶対に勝つ前提で。
それが始まってみるとまあ反応が早い。
余裕でぱぱっと勝って、『私凄いでしょ!』と威張るわけでもなく、クールに席を立つ。そう、いつも上から頭を掴まれたり撫でられたりと幼稚っぽいキャラが定着しそうなので、大人っぽく振舞って見せようと企んでいた。それが台無しになりそうで、かなり頑張った。
結局、ギリのギリギリ勝利を収めた雪であるが、当初の目的は忘れ盛大に喜んでいるところだ。
そして…
『ばくごうばくごう、私勝ったからなんか奢って!』
「テンメェ…有利な個性ある癖に調子乗りやがって…」
(かっちゃんがたかられてる…!!信じられない光景だ…!)