第16章 ❄️ 風
じゃーん、とご機嫌に効果音を口にし、先程の小さな雪の粒とは違う大きな雪の結晶を作ってみせる雪。
「昇華、なるほどな。」と呟くと、心操は結晶から雪へと視線を移す。そして思わず、ん?と声が漏れる。
『おぉ』
…
なぜ彼女は自分の個性で作った結晶を見て感心しているのか。
ぱっちりと大きな瞳を輝かせ。
と、思うと、今度はぐーにした手を口元に当て、下を向き何か考える素振りをする。
『……より………なっ…よね…!』
「ん?なんて?」
何か呟いたらしいが聞き取れない。聞き返しても反応しない。つまり独り言か。急にどうしたというのだ。
戸惑う心操を置いてけぼりに、またもや表情の変わる雪。
お次は何か思いついたのかぱっと表情が明るくなったかと思うと、『えへへ~』と頭を掻きながらデレデレと笑いだしたのだった。
「………………っぷ、ははっ」
『っぅえ?』
「ふっ、やっと戻ってきた。」
聞いた事のない声。いや、この声は彼の声。だがワントーン高い、明るい声。その声に自分の世界から呼び戻された少女は驚きぽかんとする。
「また変わった。」
おもしれ、と。笑う彼。
『し、しんそ…』
「ん、なに?」
呼びかけた、のだが。何故か、言葉に詰まる。
『えっと、』
また自分の世界に入ってしまっていたのだ。それで笑われてしまったのだきっと。恥ずかしい、そう。恥ずかしくて、顔に熱が溜まる。
「また。」
ははっ、と楽しそうに笑う彼。
(えっと、えっと、えーっと)
『ご、ごめ、私ね、たまにやっちゃうっていうか…』
(しんそう、明るい感じ初めてだ。え、笑顔だ。くっ、これがギャップってやつの威力か!?)
ううっと目を瞑り歯を食いしばる。
「変な雪だな。」
『う、うーん(初めて名前呼ばれた!嬉しいけど、なんか、なんか)』
ちょっとだけ逃げだしたい気持ちになる。
というかそもそもなぜこんなに笑われているのだ。自分の世界に入ってしまった間にそんなに変な事でもしたのか?恥ずかしいし、なんか納得いかない。