第15章 ❄ ヒーローみたい?
授業を終え下校時刻。
雪は大急ぎで帰る準備を終え、教室を飛び出した。
(早く試したい…!)
向かったのは小さめの体育館。既に相澤に許可は取ってある。
体操服は今日は持ってきていないため制服のまま体育館に入り、隅にカバンを置くと大きく一つ、深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
そして両手を胸の前に広げると、意識を集中させる。
手の上にたくさんの細かい雪が浮かび上がる…
形状を目で確認出来ないほどの小さなものは、容易くたくさん作ることが出来る。
『これをまとめて…』
シュッと雪が纏まり、できあがったのは1本の細長い棒切れ。
意識を更に集中させ、結晶と結晶を絡み合わせ、強度を加える。
『できた………』
目の前に浮かぶ、白い棒を右手に取ってみる。
ぶんぶんと振ってみる。
『やった、なんで今まで思いつかなかったんだろう…』
しゃがんで体育館の床を棒でコンコンと叩いてみる。
多少崩れて雪が飛び散るが、原型は保たれている。
『もっと練習したら武器になるものとかも作れるかな』
17時45分。
体育館に来てから一時間程が経過していた。
小規模とは言え夢中になって色々な形の''物体''を作っているうち、すっかり体が冷えてしまっていたため、少女は外への扉を空けて夕焼けに当たっていた。
白い髪がオレンジ色に染まる。
『春は暖かいなぁ』
そう呟いて夕日を眺めていると、零、と後ろから声をかけられる。
『お父さん!』
振り返るとそこは夕焼けに染まる牧場。
『お父さーん!!』
丘の上に立つ父と、周りにいるのは羊達。
幼い少女は父親の元へと走る。
「おう、零は女の子なのに足が早いなぁ。」
『えへへー。』
抱きしめた娘を離し、父は娘の後ろへと視線を向ける。
「お前も負けてられないな。」
『えっ?』
誰に話しかけてるの?
パッと後ろを振り向くが、誰もいない。
『お父さん?』
「ん?どうした?」
『……………。』