第15章 ❄ ヒーローみたい?
(皆何を書いてるんだ…)
鞄から筆記用具を出しながら【完全記録】の記憶から手がかりを探そうとするが、自分の視界に映していたのは自分の机だけ。音声は記録されないため何も分からない。
どうしよう、と焦っていると飯田の声がする。
「皆名前はかけたか!?俺が集めよう!!」
(名前!?名前書けばいいの!?)
順番に紙を集める飯田がこっちまで来る前にササッと走り書きで名前を記入する。
(なんだこれ、なんで紙に名前を?先生は……………芋虫。)
訳の分からないまま、ただ飯田の行動を眺める。
全員から紙を受け取った彼は、黒板の方へ行き…………
(これは…………投票??)
飯田はチョークを手に取り、紙を確認するとクラスメイトの名前を書き、その右にちょん、と1本ずつ線を引いていく。
(私、自分の名前書いちゃったじゃん…てか何の投票かな?)
それに10名ほど名前が書かれているのだが、それぞれ1票ずつしか入っていない。
ますます訳が分からなくなる。
飯田が全て記入し終えた。と同時に彼は床に手を着く。
「0表…分かってはいた…!!さすがに聖職といったところか…!!」
投票と思われるものの結果は、緑谷が3票、八百万が2票。他は全て1票ずつだ。名前の書かれて居ない者は0票ということだろう。
「僕三票ーーーーー!!!?」
「なんでデクに…!!誰が…!!」
「まーおめぇに入るよか分かるけどな!」
周りの反応をキョロキョロと見回す雪。
それを見て右隣の切島はふっ、と笑う。
(雪のやつ、また聞いてなかったな。)
多く票の入った緑谷と八百万が前に出ると、芋虫から相澤が出てきて言う。
「じゃあ委員長緑谷、副委員長八百万だ。」
「うーん、悔しい…」
「ママママジでマジでか…!!」
(!!!あー、学級委員かー………)
やっと理解した雪。なんだか疲れてしまった。悪いのは自分だが。
ふにゃぁ、と机に突っ伏す彼女の心理を理解しているのは隣の切島のみ。