第15章 ❄ ヒーローみたい?
(雪の形状を自由にデザインする…)
考えたことが無かった。
雪の形状はその時の温度と水蒸気量によって決まる。そこに自分が個性を働かせると自然と条件に合った結晶が出来上がる。そういうものだと思い込んでいた、と言うより、考えたことがない。試したこともない。
雪の結晶の形状。それは一つ一つ全て違うものだが、似たもの同士で分類することができる。そしてその似たもの同士は、温度と水蒸気量の条件が近いもの同士ということだ。
''雪は天から送られた手紙である''
そう言われるのは雪の形状から空の上の温度と水蒸気量を予測することができるから。
(デザインするということは、私の個性だったら使う水蒸気の量を調節するということ?温度の調整なんてできないし…)
個性を使う時、すなわち雪を作る時に感じ取るのはその場に在る水蒸気。個性を発動させると水蒸気が昇華する。
水蒸気が昇華され雪になった感覚、それらが壊れる感覚は体に伝わる冷たさと僅かな振動によって感じ取ることができる。自分にとって雪は分身のようなイメージ。
(作れる雪はたいらで六角形のものだけ。柱状や針状のものは作れない。)
【角盤】と呼ばれるタイプの雪。大体-10~20℃の時にできるものだ。一般的にイメージされる六角形の雪の結晶。
【角盤】だけでもやはり様々で、角の先が尖って枝分かれしているもの、6枚の花びらをつけた花のようなもの、板のように隙間のないもの等がある。これが水蒸気量によって決まるのだ。
(水蒸気が少なかったら限られた形しか作れないけど、多い時なら使う水蒸気の量を決めて大体の形を意識して作れるかも…)
『つめたっ』
突然おでこに感じた冷たさに思考が中断される。