第15章 ❄ ヒーローみたい?
「確かに、マイペースなとこあるよなー」と瀬呂。
「このままだと常闇さんが座れませんわ。」
どうしましょう、と八百万が口にすると、雪が座っている席の後ろ、轟が到着する。
「…何してんだ。」
いつも前の席にいるのは黒い頭の常闇。そこに座って黙りこくっている白い頭と、彼女を囲む3人を見て尋ねる轟。
「轟さん、おはようございます。雪さんが急に動かなくなってしまって困っていますの。」
「………具合でも悪いのか。」
そう言うと轟は身を乗り出し、右手を横向きに座っている雪のおでこに当てる。
「………!」
「おお」
「まぁ。」
それを見た3人は少し驚いた表情に変わる。昨日の戦闘訓練の後もそうだったが、轟は意外と大胆?らしい。
切島は無意識にゴクリと唾を飲む。
おでこに手を当てられた雪。轟が軽く個性でその手を冷やすとビクッと肩を揺らす。
『つめたっ…あ!とどろきおはよ!えっと、何してるの?』
「熱があるんじゃねえかと思って冷やしたんだが…」
『熱?ないない、元気だよ?あ、』
周りの視線は特に気にならない2人。
『やおよろずごめん、あのね、正直考えたことなかった。』
「え?ああ、雪の結晶のデザインの話ですわね。」
『あれ?いつの間にみんな来てたの?』
瀬呂と切島は顔を見合わせて目をぱちぱちさせる。
八百万は眉を下げあはは、と苦笑い。
雪のおでこから手を離した轟は「元気ならいい。」とカバンの中身を机に移し始める。
『あ!もうこんな時間だ。じゃあ私、席戻るね。』
そう言って席を立つ雪。
2つ前の自分の席に座ると、またしてもじーっと動かなくなってしまったのだった。