第15章 ❄ ヒーローみたい?
『ねぇねぇ、やおよろずの個性って、どんなものでも作れちゃうの?』
鞄を自分の机に置き、2つ後ろの席、八百万の隣に座る。(ちなみに他の列は5席だが窓際から2番目の雪の席がある列だけ6席で、轟の席が一つだけ後ろへ飛び出している。)
「どんなものでも、とは行きませんわ。生き物は作れませんし、分子構造の分からないものも作れません。逆に言えば、分子構造をイメージすれば都合のいいものがなんでも作れます!」
八百万は隣に来た雪の方に体を向けて目を閉じ、右手を胸の上あたりに当てながら誇らしく言う。
『分子構造をイメージ?』
「はい。この世のものは全て分子からできていますから。もっともっと知識を増やさねばなりませんわ。」
『へえ~!凄~い!』
目をキラキラさせて八百万を見つめる。便利な個性、というのがおそらく皆の第一印象であるが、メカニズムはかなり細かく難しいものらしい。
「ふふ、雪さんの雪の結晶を形成する個性も素敵ですわ!一口に雪の結晶と言っても形状は様々ですが、それも自由にデザインできますの?」
『えっ』
「……??雪さん、どうかされましたか?」
八百万の質問を受け、ポカーンと動かなくなってしまった雪。
何か変なことを、言っただろうかと八百万は戸惑いながら彼女の目の前で手を振ってみる。しかし一向に動かない。
どうしたものかと眉を下げ考えていると、他のクラスメイト達が到着し始める。
「はよっ八百万、雪!なんか校門のとこめっちゃカメラとかいたな!」
声を掛けてくる切島。
「おはようございます切島さん、瀬呂さんも。」
「おーっす」
「「「………………………」」」
微動だにしない雪。
「八百万、雪どうしたんだ?」
瀬呂が尋ねると八百万は困った顔をして答える。
「それが…お喋りをしていたら急に何を言っても動かなくなってしまって………」
雪はいつの間にか顎に手を当て何か考え込むようなポーズをしている。
あー、と切島。
「雪って何か自分の世界入ると周りの声聞こえなくなるタイプだな。昨日もボーッとして先生の話聞いてない時あったし。」