第15章 ❄ ヒーローみたい?
入学三日目の朝。
登校の準備を終えた雪は本棚から小学校と中学校の卒業アルバムを抜き取る。
『やっぱりいないよね…』
夢で見た、自分と同じ白髪の幼い少女。
知っているような、知らないような…
アルバムのページをめくり探してみる。
同じ目線の高さと雪景色。自分がまだ幼い頃に会ったことがある子だろうか。
田舎の小さな学校だったため、全校生徒の顔と名前はだいたい知っている。自分のような白髪の子はいなかった。
その記憶は正しく、いくらページを捲っても、探している子が見つかることはなかった。
『いったい誰なの…』
(そうだ、)
思いつき、スマホのメッセージアプリを開く。
[おはよう、お母さん!実はあの悪夢の内容を少し思い出したの。それで聞きたいんだけど、同じくらいの年の私と同じ髪の色の子供って町にいたっけ?]
『よし。』
文章を送信し、時計を見るといい時間。
(昼くらいには返事きてるかな…)
「………………。」
「お母さん、どうした?」
スマホの画面を見て難しい顔をする妻に問いかけると、彼女はハッとして画面を夫へと向ける。
「零から来てたメッセージ…」
「お!俺の方には来てなかった。どれどれ…?」
娘からのメッセージ。
「………………………これは……………」
後から読んだ夫も表情を強ばらせる。
「仕方ないわね。それだけ大切な記憶のはずなんだもの…」
「…………そうだな。だが今はまだ何も言わないでおこう。大事な時期だ。」
❄❄❄
『おはよーう』
教室の扉を開けながらクラスメイト達に挨拶をする。が、来ているのはまだ1人だけだ。
「おはようございます、雪さん。」
一番窓側の1番後ろ。出席番号が一番最後の彼女。
『やおよろず!早いね!』
「ええ、早く登校するのは気持ちがいいものですわ。」
わかるー、と2番目に登校した少女は笑う。