第14章 ❄️ 知りたい
全ての映像を見終え、パソコンの電源を落とす。
窓の外は当然真っ暗。見えるのは学生寮の明かりだけ。
残っている教師は自分で最後だ。
「帰るか…………」
教師専用の玄関で靴を履き替えようとした時、ガラスの扉からコンコンと音が鳴る。
ぎょっとしてそちらを向くと、白い子供の姿が…………………
「雪、何してる………」
はーーっとため息をついて扉を開ける。
『あいざわ先生、ごめんなさい。明日提出する今日の振り返りシート教室に忘れてちゃったんです。校舎みたら職員室の電気がまだついてたから……』
「だったら電話を入れろ。こんな夜中に出歩くもんじゃない。」
『ごめんなさい…』
しゅん、と申し訳なさそうに目を伏せる雪。
長いまつ毛。
「早く取ってこい。懐中電灯やるから。」
そう言って玄関に常備している懐中電灯を渡す。
『えっ』
「………なんだ。」
目を開けた彼女は顔を青くして相澤を見つめる。
『えーっと、暗いから…』
「だからこれ使うんだろ。」
『ですが………!』
「……………怖いのか。」
そう問うと彼女はうっと声を漏らし下唇を噛む。
『こわ、怖くありません!』
と言いながらも全く進み始める気配がない。
はーっと息を吐いて履き替えた靴を脱ぐ。
これではいつまで経っても帰れない。
「着いてってやるから。さっさと行くぞ。」
『…!はい!1人で行けますけどね!!』
「おい。」
がっと小さな頭を掴む。
今日はよく頭を掴まれるなと思いながらも雪は笑う。
『ありがとうございます!あいざわ先生!』
「……………」
ふわりと香るシャンプーの匂い。もう入浴は済ませたのか。
『あいざわ先生?』
下からこちらを覗き込む少女。
手を離すとサラサラの美しい髪が少し揺れる。
ゾクリ、と何かが掻き立てられる。
(やめろ………相手はガキだぞ。)
ここで欲に従ってしまったら教師どころかヒーローでもなくただの犯罪者。
「行くぞ。」
『はい!』