第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
巧く呂律が回っていないが言いたいことは伝わっただろうか。いつまでも頂点でいられるわけないと常々思っていたことだった。例えばの世界では、その脅威はウィルスに当たるかもしれない。姿を変えたり未知のウィルスが発見されたりと、人類を脅かす存在は巨人と同じように脅威である。
人間は罪だ。生きるために家畜を育てて食す。百獣の王ライオンでさえ食物連鎖に入っているのに、人間だけがそのサイクルに乗らないのだ。だって罪深い。分かっていて牛や豚を食べるのだから。
ハンジは眼を剥いて片手を突き出した。
「ちょっと待って、よく聞き取れなかった! しょこおつえんさだっけ?」
「舌回ってませんか、ボク? しょくもつれんさって言ったんですよ」
「ってどういう意味なの?」
巨人という生物の研究をしている人が、どうして知らないのだろう。微睡む頭で訝りながらは説明した。
「ピラミッドが」
「ぴ、ぴら? え?」
もどかしさを感じては頭を掻きむしった。何がどうして話が通じていないようである。
大げさに腕を動かして宙に三角形を描いてゆく。
「三角形に、例えば横に三等分線を引くんです」
「紙とペン、紙とペン!」急いで半身を捻ったハンジが後ろに手を伸ばした。本棚の筆立てからペンと適当な用紙を掴んでテーブルに置き、の説明になぞってメモを取り始める。
「下から植物、昆虫、鳥って感じになります。これは食う食われるの関係で、頂点の鳥は糞が植物の養分になり」
「育った植物を昆虫が食べる! 美味しそうに太った昆虫を鳥が食べる!」
「で、鳥が糞をして~の繰り返しです」
自分で書いたピラミッドを翳して、ハンジは眼を輝かせた。
「斬新だ! それを細かくすると頂点が巨人になるわけか!」
しかしは疑問に思って首を捻る。
「……巨人って、どのくらいいるんですか?」
「壁の外にうじゃうじゃいるよ。討伐しても次々湧いてくる、切りがないほどだ」
うじゃうじゃいるという。それは人間よりも多いのか。
「人間よりも、かなり少なくないと可怪しいんですけど。見てきた感じはどうでしたか? 人間よりも多そうでしたか?」
「うーん、未知の領域もあるからね。奥まで行けばもっといるのかもしれない。もしそうだとして、なんで可怪しいの?」