第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
白い枕に、だらしなく乱れている掛け布団。倒れるようにベッドに沈んだに、腕を腰に回していたリヴァイも巻き込まれた。
「おいっ」ベッドに片肘、片膝を突く。
「温情に甘えて……寝かせてもらいますね……」
「……ああ」
頭の横で両手を投げ出し、もう寝る体勢で安らかに瞼を閉じているの顔が、ころんと横に転がった。具合の悪さに反比例して赤味を帯びている唇からは、白い歯がちらりと覗く。
ひどく無防備なその色っぽい唇を強引に割って、舌を捩じ込ませたらどんな味がするだろうか。――とリヴァイの喉仏がごくりと下がった。
(酒の味しかしないに決まってるだろうが)
甘いわけがない。大体にしろは男なのである。
どうかしている、とリヴァイはかぶりを振った。たまにしなを作る彼を気持ち悪いと思うくせに、
(気持ち悪いのは俺のほうじゃないか。あざ笑いも出ねぇ)
早急に店で女を抱いてこようと思った。
※ ※ ※
朝の陽射しが差し込んでくる。カーテンを閉めておけばよかったと思っていた。
午前中の訓練を免除してもらったはベッドで寝返りを打った。調子の悪い呻きが漏れる。
「頭ガンガンする……完全に二日酔いだわ」
眠いのに脈打つような頭痛のせいで、なかなか寝つけないでいた。
「これからはハンジさんに気をつけないとな」
ハンジの部屋を訪れた昨晩の出来事を思い返していた。
瞼が落ちては上げるを繰り返していた。ああ意識が飛ぶ。夢の中へ行けそうなのに誰かがの両肩を激しく揺さぶってくるのだ。
「でね! 巨人は約百年前に!」
「……ああ。現れたんですっけ? っていうか、それもう三回目です」
「あれ? これ話し済みだっけ?」
眠りを妨げてきたのは眼が血走っているハンジであった。キッチュな一人掛けソファに座って、丸テーブルを挟んだ向かいにいる彼女の瞳は赤く充血している。眠いけれどお喋りのほうが勢いづいていて眠気を抑え込んでいるようだ。
眼をこすっていたら、ハンジが琥珀色の液体が入ったグラスを差し出してきた。
「ヤクが切れたかな? ほらほら一杯どーぞ」
ヤクと言ったが妖しいものではなく、ただの酒。要はを寝かさないためのガソリンである。