第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
胸許に凭れて、は我慢するように眉を寄せていた。長い睫毛に、ほんのりと薄く開いている唇を見降ろしていると、リヴァイを妙な気にさせてくる。
(馬鹿か、こいつは男だ。俺に変な趣味はない)
自分に言い聞かせるが、寄りかかるの重みが男の性欲を刺激してくるのだ。情けなさを感じてリヴァイは天井を仰いだ。
(そういや、このところ女を抱いてない。そのせいに違いねぇな)
今夜行き着けの店に行こう。そうしてすっきりすれば、女っぽいに欲情することもないだろう。
「飲まされたと言ってたが一応言い訳を聞いてやる」
そして名前が出た奴をあとで締めてやる、とリヴァイは遠くを睨んだ。訓練を妨げた報復をしなければ気が済まない。
「お酒を飲んだのはボクが寝てしまわないようにで……ハンジさんの話が主役だったんです」
「ハンジの話?」ピンときた。「巨人の話か。それにつき合わされてたってわけか」
ハンジに気をつけろと忠告するのを忘れていた。調査兵団で彼女の餌食になってしまう者は何も知らない新兵しかいないのである。巨人のことを話し出すと止まらないことを知っている兵士たちは、やばそうな空気を察して一目散に逃げる特技を身につけていた。
「ずっと聞かされていて気づけば朝でした。だから睡眠取ってなくて身体がしんどいんです」
声が死にそうな響きだった。こんな状態で無理矢理訓練をさせても意味がない。
溜息を絞り出し、リヴァイはを引き上げた。
「午前中の訓練は免除してやる。その代わり午後の訓練はいつもの倍だ。いまのうちに寝ておけ」
「すみませんでした」
「もういい。俺もハンジのことで注意しておくのを忘れていたしな。あいつに捕まったら逃げられん」
何とも優しいものだとリヴァイは思う。を抱き支えてベッドまで連れ添う。
「すみません、助かります。自分の部屋が歪んで見えるほどなので」
「転ばれて怪我でもされりゃ、また予定が狂うからだ」
こうやって身体を寄せていると、どうも違和感を感じずにはいられなくなる。自分でも不明な違和感が男の部分をこそぐってくるのだ。その影響もあってか、いまいち接し方が中途半端になってしまう。