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水平線に消えゆく[進撃の巨人/リヴァイ]

第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)


「寝ていない?」
 扉の隙間から奥が見えた。ブルーデージーを生けた一輪挿しが置かれている机に、見覚えのある綴じ紐されたぶ厚い資料が開かれている。あれはハンジが研究した巨人の資料だ。リヴァイがいらないと言っているのに、読め読めとしつこく進めてくるものだ。

「やっと真面目に取り組むつもりになったか」
 とても眠そうな眼で、「何のことです?」とが問い返した。
「閲覧室から巨人の資料を借りてきて、夜通し読み耽ってたんだろう?」
 それならば遅刻の怒りも収まるというものである。だというのに、は病的に青白い顔でハテナマークを頭の上に出していた。
「違うのか?」
「期待を裏切るようで申し訳ないんですが違います、すみません」

 そういえばが喋るたびに酒気が鼻をついてくる。リヴァイは鼻を摘んだ。「酒臭いんだが」
「やっぱ臭いますよね……。いっぱい飲まされたんで」口許を手で覆い、はは――っと息を確かめる。
(飲まされた?)
 引いた怒りが蘇ってきて、リヴァイは両手をぎりぎりと拳にした。生死の剣が峰に立っていることが分からないのだろうか。
「訓練兵より下の下のくせして、酒を飲める分際か!」

 しんどそうに両目を瞑ってが指先でこめかみを押さえた。「大きな声を出さないでください、頭に響く」
「お前がとろいせいで訓練課程が遅れ気味だってのに、二日酔いかよ!」
「だって」
 やる気のなさに腹が立っての襟を掴んで引き寄せる。
「教えてやってる身の立場に立って考えてみろ!」
「これにはわけが」
 言い訳しようとしたの足が、がくんと崩れた。このままでは首を締め上げて殺してしまう。リヴァイは一緒に膝を突いて、咄嗟に小さな背中に手を回した。がくたりと身を寄せてくる。

「頭が回る……気持ち悪い」
 小さくえづいたように見え、リヴァイは僅かに動揺した。ぶちまけられたらたまらない。
「ここで吐いてみろ、殺すぞ」
 襟を掴んだ拍子にの頭を揺らしたことで、二日酔いに拍車をかけてしまったようである。
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