第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
この二日間でリヴァイへの苦手意識が増した。粗暴な態度に反抗心が芽生えてしまう。
立体機動技術においては、素人目からしても彼がずば抜けていることは分かった。ハンジが言っていた人類最強の通り名は、あながち間違ってもいないのだろう。
が、にはどうしても受け入れられず、女兵士たちが黄色い声を彼に上げるのも、やっぱり理解できなかった。たとえリヴァイが調査兵団を背負うエースだとしても、初対面で乱暴な態度ではそれも致し方なかった。
09
訓練初日から数日が経過した。疲労はピーク。心身ともに疲れ果てたは夕食をしに食堂へ来ていた。
卓上ランプが灯る厨房のカウンター横で順番待ちをしているは、自分の番はまだかと首を伸ばした。
この世界には電気がなかった。照明はオイルなどの燃料や蝋燭がおもである。発電所から供給される明るさを知っているからすれば、この世界の夜は暗い。訓練が終わって自分の時間をようやく持てるころには、知識を得ようと本を読むにも不便を感じずにはいられなかった。
「はいよ。あんた細いから多めに入れといてやったからね」
割烹着を着た厨房のおばさんが、どんと盆を置いた。
「ありがとう。お腹ペコペコだったから嬉しいな」
知らない世界で気を遣ってくれる人がいる。とてもありがたいことだし何気なさに救われもした。
(でもおばちゃん……、豪快すぎてお皿からスープが零れてるのよ。もったいない)
受け取った盆を持って、空いている席はないかと首を振る。食事や雑談を楽しんでいる兵士たちで食卓は満席に近い。
一人で食べる日が続いており、賑やかな様子はをうら寂しくさせた。こういうとき相部屋だったなら、いまごろ気の合う友人を作れていたのだろうか。
(仲良さそうにしてる食卓には座りづらいな)
突っ立って首振り探していたら、こちらに大きく手を振っているハンジに気づいた。ばっちり眼が合うと、さらに「おいでおいで」と呼ぶ動作をする。一緒に食べようとを誘ってくれているようである。
混み合う食堂を縫ってハンジのそばへ行くと彼女は隣の椅子を引いた。