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水平線に消えゆく[進撃の巨人/リヴァイ]

第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)


「死なねぇよ、命綱があるだろう」
 の腰許にはロープが巻かれていて足許に垂れていた。綱引きの縄みたいに丈夫で太ければまだしも、古びてけばけばな細いロープは逆に恐怖を煽ってくる。

「ロープが切れたらどうするんですか!」
「立体機動で助けにいってやるから早く行け」
「人が落ちるスピードに間に合いませんよ!」

 支えもない状況でこうして留まっていられるのは、リヴァイが本気で背中を押してこないからだった。の決心がつくのを根気強く待ってくれているらしい。
 が、いい加減疲れたようでリヴァイが溜息をついた。立体機動訓練に入る前に必要とされる、バンジージャンプをこなさなければ、次の過程に進めないようなのだ。

「時間の無駄だな」
 本気で突き落とす決心をリヴァイがしたようだ。
 背後で殺気を感じ、は反転して命綱が結ばれている木の杭に慌ててしがみついた。乾燥した木の感触が密度を心配させた。
「怖い、無理!」
 舌打ちが聞こえたと思うと、リヴァイに首根っこを掴まれる。

「何してんだ、駄々を捏ねるのもいい加減にしろ! これが終わんねぇと次へ進めないと言ったろうが!」
「進めなくていいです!」
「阿呆抜かせ! 俺が困る!」
 リヴァイが引っ張ると、しがみついている木の杭も僅かに揺れた――気がした。

「く、杭が動いた……。この杭、信用できません!」
 泣きたい。の表情はいまや恐怖で引き攣っていた。少しの刺激で動く杭に命を預けるなどできない。
「錯覚だ。飛びたくないからって愚かな嘘をつくな」
「本当なんです!」
 眼に涙を浮かべるを見て、怒りを吐き出すようにリヴァイは息をついた。片足を後ろに振り上げる。
「なら試してやる。見てろ」

 振り上げた足が向かってきた。咄嗟に杭から離れたと同時に、勢いをつけた彼の足が杭を蹴り上げた。
「どうだ、びくともしねぇぞ」
「……ひどい」
「あ?」
 怒りを堪えて無表情を装うリヴァイを遺恨に思う。は杭に飛びついた。ぺたぺた触って損傷がないかを確認する。
「いまので根っこがやられてたら、どうしてくれるんですか!」
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