第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
は思う。(ない、ありえないわ)
一緒にいて潔癖性ほど苦痛を感じるものはないと思う。風呂は仕方ないとして、他人にまで清潔を強要してきたりはしないが、光景を眺めているだけでしんどいものがある。女兵士たちの乙女心がますます分からない、とはさらにかぶりを振るのだった。
「まずはウォーミングアップか」
平均台や鞍馬らしきものがある場所でリヴァイは言った。外に置きっぱなしなので汚れがひどい。昨夜の雨の名残もある。
「そこに座れ」
言われた通り、は地べたに体育座りをした。ここは乾いているが、砂利が尻に当たって少々痛い。
「何をするんですか」
「ウォーミングアップと言ったろう。足を広げて上体を倒せ」
なるほどストレッチをしろというのか。は上体を倒していった。軋む筋の痛みで片眼を瞑る。
「いたたたた」
「なめてんのか。もっと倒して両手をつけろ」
「ちょっと厳しいです」
リヴァイが横についた。「触りたくないが、そうも言ってられないか」
背中をぐっと手で押す。
「痛い、痛い」
両手が宙を泳ぐ。両脚が攣る感覚がして脚が内股になった。会社でデスクワークばかりのに運動なんて縁がなく、身体はなまる一方で、知らずのうちに柔軟性がなくなっていたようだ。
「どんくせぇな」
リヴァイはおもむろに正面に腰を降ろした。眼が合って一瞬どきんとしてしまったのはの不覚である。
「どうしたんですか、急に」
開いている内腿に予告なくリヴァイの足が触れた。両足でがばっと開かれる。
何が起こるか、ぴんときたは大慌てした。
「待って! それは嫌です、絶対! やめてください!」
命乞いは無視され、一回り大きな手で両手を取られた。異性の手が触れても今度はどきんとする余裕などなかった。手加減なく引っ張られる。
はたまらず悲鳴を上げた。
「痛い! やだ、離してください!」
全身の筋という筋が引き攣る。