第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
「さっきからお前、何が言いたい」
「いえ」とは口籠る。こめかみにはたらりと汗。
「盆をもらったときからしけた面してやがったが、不満があるなら食ってもらわなくて結構だ」
「そういうわけではなくて……」
「そのほうが一人分食費が浮く」
「あの、違くて。体力仕事なのにちょっと少ないなぁって思っただけで」
バカみたいに笑いながら、は親指と人差し指で少量を示してみせた。
「舌の肥えたぼんぼんには豚の飯にしか見えんだろう、食うな」
盆を摘んでリヴァイは引いてこようとする。は慌てて盆を押さえつけた。
「ダメ! ボクの朝ご飯!」
寂しい食事だとは思うが腹はとんでもなく減っているのだ。
半身を横にしてリヴァイは頬杖を突いた。すっかり機嫌を斜めにしてしまったらしい。
「必死に取り返すぐらいなら、文句垂れてねぇでとっとと食え」
「すみませんでした。いただきます」
手を合わせて食事に礼をした。口に運んだスープは美味しかったが、野菜も肉ももうちょっと食べたかったと胃が訴えた。噛みちぎったパンはやはり固くてもさもさした。
料理人の腕が悪いわけではなさそうだ。おそらく安い食材を使っているためだろうと思われた。
(お肉の分量からして調査兵団って貧乏なのかしら? だってこれが当たり前なんでしょう?)
たった数日間だったがフェンデル邸で過ごした時間が恋しく思えた。伯爵邸で出されていた食事が豪華だったからなおさらだった。贅沢に慣れるものではないと思いながらも溜息をついてしまっただった。
07
とリヴァイは広い敷地内を歩いていた。本部から出発し、舗装されていない砂道を歩いて訓練場へ向かっていた。
背後にある本部が小さくなっていくと、前方に訓練場だとはっきり分かるものが見えてきた。訓練場といっても用途ごとに分割されているようで、中央はひらけた広場、両隣は緑が目に優しい森と、切り立った崖が見えた。訓練の内容によって場所を変えるのだろう。
歩きながらはきょろきょろした。あちこちに兵士がおり、彼らは班ごとで訓練に励んでいた。女兵士の多さにも驚いた。軍隊というのは、どうしても男のイメージが強いからだ。
(自衛隊にも女性はいるけど、ごく少数だものね)
男女関係なく活躍する場があるのは良いことに思えた。