第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
一人用のコンパクトな机の上に兵団の服が畳まれていた。手に取ったはジャケットを広げてみる。
「今日からこれを着て、私も調査兵団の一人になるわけね」
管内を案内してくれたハンジと備品室に寄り、サイズ合わせをして支給された軍服である。机と揃いの椅子には調査兵団の外套も背凭れに掛けられていた。背中の部分に紋章の刺繍が大きく入った鶯色のハーフ丈のものだ。
白い羽根と青の羽根が重なっている紋章は、自由の翼を表現しているのだという。その謂れの通り、自由を得るために彼らは活動しているのだろうけれど、にはまだよく判らない。一緒に行動するうちに理念が見えてくればよいのだが。
ジャケットを腕に引っ掛けて、遠くのほうに橙色の雲が見える窓を眺望した。角部屋ではないから自然光を取り入れるための唯一の明かり窓だ。
「もうすぐ夕方ね。暗くなってくると訓練は終わりなのかしら」
班と思われる塊が、兵舎のほうへぽつぽつと向かってくる姿が見えた。
備品室で新しいジャケットとズボンをに渡したハンジはこう言った。
「サイズは九号か。リヴァイと背丈が変わんないから同じくらいかと思ったけど全然だったね」
手始めに彼女が差し出してきた試着用のジャケットは大きかった。このときはリヴァイとは誰なのだろうと思ったが、いまになって納得だ。おそらくハンジは彼と同サイズのものを差し出してきたのだろう。
ハンジは続ける。
「ジャケットの下にはシャツを着てね。決まりはないから襟羽根付きでもいいし、丸襟のものでもいいよ」
と言って卵黄色のシャツを彼女は摘んでみせた。第三釦まで解放されており、鎖骨が見えて色っぽい。
胸許がたるんでしまうTシャツよりも、首許にぴったりとするYシャツのほうが無難だろう。が頷くと案内の続きが始まった。
「次は閲覧室に案内してあげる」