第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)
行儀悪く足を乗せた丸テーブルに、リヴァイは引っ手繰ったホワイトタイを投げ置いた。鎖骨が見えるところまでシャツの襟を緩める。
「怪しんでるんなら下半身を確かめてみろ。パンツを履いてるだろう」
言ってから変な間があいた。薄ら色づき出した窓の向こうへ、リヴァイは思量するように瞳を彷徨わせる。
「履いててもやろうと思えばできるが」
「な、ないわよね!?」の声は裏返った。
リヴァイの態度がかなり面倒臭そうなものになる。
「だからないって言ってんだろ、しつけぇな」
朝日が昇り始めるまで凝視して、は最終的にリヴァイを信じることにした。
上目遣いで言う。「面倒をかけたわね。ありがとう」
「ああ、まったくだ」
気怠そうに腰を上げてリヴァイは備えつけのクローゼットを開け放った。中からシャツを出してソファに投げる。着替えるらしい。
も早々に退散しなくてはならないだろう。
「部屋に戻るわね」
掛け布団からシーツを剥ぎ取って身体に巻きつけ、ベッドから降りた。ドレスが掛けられているハンガーに手を伸ばそうとして、背後から伸びてきたリヴァイの手に止められる。袖釦を外しているから手首が曝け出されていた。
「部屋番号を教えろ。メイドを連れてきてやる」
「でも」振り返って、の胸が高鳴った。リヴァイの顔が近かったからである。寝起きの怠さがまだ取れていないようで無精じみた眼つきをしていた。
「コルセットなしに着れるのかよ。昨夜脱がせて思ったが、あまり余裕がなさそうに見えた」
さらりと言っているが女性に対して失礼だ。は唇を突き出す。
「き、着れるわよ、コルセットなんかなくたって」
「百歩譲って着れたとして、後ろの釦を一人で留められるのか」
無理かもしれない。は口を結んで黙った。リヴァイは壁に片手を突き、の耳許に唇を寄せてきた。
「別に俺が留めてやってもいいが。昨夜は暗くて幾らも見えなかった裸同然のを拝めるしな。役得ってやつだ」
セクシーな掠れ声に腰が砕けそうなった。肩を竦めては顔を背ける。
「よ、呼んできて、早く! 三〇六号室よ!」