第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)
「なあ、。好きなようにされてるが、俺が誰だか分かってるのか」
反っている喉許に舌を這わしながら囁いた。獣が獲物を捕らえるとき、真っ先に喉に噛みつく気持ちがいまなら分かる。太い血管が何本も走る喉に食らいついてしまえば、制圧して己のものにできるからだろう。
「…………誰? …………分からない」
眠気混じりの舌足らずな声は、リヴァイの胸を悪くさせた。
「誰だか分かんない野郎に、こんなことを許すのかよ」
男にとってこういう状態の女は据え膳で喜ばしい――はずなのに苛ついた。意識が混濁しているとはいえ、無防備に肌を触れさせるにリヴァイは苛つきを覚えた。
「酔えば誰にでも股を開くのか」
「……違う、好きな人じゃないといや」
「甘い声で俺を誘惑してる奴がよく言う」
性衝動のままに柔らかいベッドへを押し倒すと、たいして大きくない乳房でも扇情的に揺さぶれた。細い手首を鷲掴み、両腕を広げさせてリヴァイは跨る。
「犯されるぞ俺に。いいのか」
「……ダメ、いや」
瞼を閉じたままではいやいやと首を振るも、ひどく弱々しいものだった。中途半端な抵抗は男としては情欲を駆り立てられる。が、
(やめとけ! 手を出すな! 後悔する!)
と脳内で鋭い声が響いた。
けれど、薄く開いているあだっぽい唇がリヴァイは欲しくてたまらなかった。柔らかさを知りたい、甘い味がするのか確かめたい、と思っていた。
この感情は言い表すとしたら独占欲である。あられもない姿を曝している彼女を、知っているのはリヴァイだけなのだ。己以外に誰も知らないという禁秘に悦を感じているわけだ。
ベッドに肘を突いて、のこめかみから生え際よりに手のひらで優しく撫でた。顔を寄せてリヴァイは色っぽい唇に近づけていく。
(やめろ!)
脳内で警報が鳴り続けているから、寸前で思い迷う。しばしのあと、なんとか踏みとどまろうと眉を顰めて眼を瞑った。と――、