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水平線に消えゆく[進撃の巨人/リヴァイ]

第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)


「別室に移動するのか。男にとっては美味しい」
「私も若いころに気絶をして、あなたが介抱してくれたことがきっかけで結婚したのよね。懐かしいわ」
 昔を懐かしむ夫婦に構わず、リヴァイは大広間を見渡した。父親であるフェンデルを探そうと思ったのだが、人が多くて見つからない。

「仕方ねぇか」
 虚脱しているの腕を自分の首に掛ける。彼女の膝下に腕を入れて立ち上がった。
「まっ」婦人の声音は小躍りしそうな感情が含まれていた。「軽々と素敵ね」
 を横抱きしたリヴァイはまともに相手せずに、
「世話になった」
 空々しく言い置いて大広間をあとにした。

 ロビーは壁一面に絵画が飾ってあった。足許の蒼いドレスを、ずしりと揺らすを見ずに訊く。
「お前の部屋はどこだ」
 気絶しているのだから返答などあろうはずがない。一応訊いてみたのは、が目覚めたときの、こちらの言い分を確保するためであった。気持ち悪い生々しい目を向けてくる、人物画を鑑賞することなく突き進む先は、リヴァイの客室だ。

「の親父は見つからない。客室も分からない。俺の部屋へ連れていくしかねぇよな。あとで文句を言うんじゃねぇぞ」
 誰も聞いていないのにリヴァイは小声で喋った。何かに対して言い訳をしてしまう。己の中に僅かな下心が湧いてきているからだった。

 角にあるのは門番のように置かれた甲冑。ロビーから客室方面へ切り替わる目印としてリヴァイが覚えていたものだ。
 首周りからの腕がずるりと落ちていきそうになった。彼女の身体を弾ませるようにして一度抱え直した。

 回廊を左へ曲がって大階段を登る。壁の上部はランプで明るい。ガス灯であり、蝋燭やオイルの明るさとは段違いだ。贅沢なものなので内地以外ではお目にかかれない。
 ランプを睨んでリヴァイは舌打ちをする。
「気にいらねぇ」
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