第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)
顎をさすりつつカスパルは見下してくる。
「あなたの父君には困ったものでしてな。くだらない議案書を提出したり、議決に異議を申し立てたり、評議会の邪魔ばかりするんですよ」
嘲笑を混じえて肩を竦めた。
「駄々をこねる童のように、なんでもかんでも干渉するのは、国の利益にはならないとそう思うでしょう?」
「異議を唱えて何が悪いんですか。議論を重ねることで国はより良く」
腰高には言う。膝の上でドレスを握りしめる手をリヴァイが強く包み込んできた。
「放っておけ」
「東洋の血など引き入れて何を考えているのやら理解不能ですが、タカのヒナは所詮タカですな。メラニズムなあなたも野蛮な血を引いてるようだ。父君の後ろ盾で強く出てこられたんでしょうが、もうフェンデル殿の時代は終わったのです。いつまでも昔の気分では周りも迷惑でしてね」
反発しようとは半身を乗り出そうとした。手をさらに強く握ってきたリヴァイに揺さぶられる。
「よせ」
カスパルは鼻を鳴らす。去り際に警告してきた。
「父君に甚だ注意しておくことですな。調子に乗っていると、背後を気にして歩かないとならなくなりますぞ。あなたもね」
そうしてユーリエも父親もカスパルもいなくなった。
リヴァイは気にしたふうもなく口を開いた。
「政治的な駆け引きは、こういう場ではよくある。ただの脅しだ。弱い奴に限ってよく吠える、気にすることはない」
「慰めてくれてるの」
怖気と怒りが入り交じっており、は俯いた。リヴァイに握られている手がふるふると震える。収めようとするかのように彼がより強く包んでくれたのだった。
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「なんなのよ、あのおっさん!」
白い喉を波立たせては蒸留酒を飲む。グラスをテーブルに叩きつけるようにして置いた。
口笛を吹くような唇を作ってが老人を真似る。「背後を気にして歩かないとならなくなりますぞ」
そのあとで眼を据わらせてリヴァイを睨んでくる。
「上等よ! 返り討ちにしてあげるわ!」
「性格が変わってるが大丈夫か?」
「酒!」
ずいっと空のロックグラスを突き出してきた。