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水平線に消えゆく[進撃の巨人/リヴァイ]

第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)


 女が歓喜の声を上げてリヴァイの肩に頭を凭れる。
「面白い、リヴァイ様ったら。豊かなユーモアがおありなのね」

「誰のせいで皺ができると思ってんのよ」
 低音でぶつくさ垂れ、は肉の盛り合わせの皿を引き寄せた。憎しとばかりにフォークでソーセージを刺す。
 今日一日リヴァイにヤキモキさせられたは何度眉を顰めたろうか。そのたび、おでこや眉間には深い皺が刻まれたに違いない。それらが明日になって癖となっていたら全部リヴァイの責任である。

「おい、腹が苦しいんだろ。食わないほうがいいんじゃないか」
「腹が減っては戦はできないのよ」
「誰と戦をするっていうんだ」
 リヴァイを挟んでと女のあいだに火花が散る。飛び散る火の粉を避けるように、リヴァイは背凭れに深く寄りかかって溜息をついた。
(男を巡っての戦いでは断じてないんだから)
 先に喧嘩を売ってきたから買うまでだ。買うといっても喧嘩は苦手なので、こちらからは仕掛けられないのだけれど。

 投げやり気味にハーブ入りの白いソーセージを前歯で千切る。ぱりっとした軽快な音は某食品CMのようだ。
 の食べ方を見て女がここぞとばかりに刺してきた。顎に手を添えて気高く笑う。
「ま、豪快だこと。わたくしにはとても真似できませんわ」
「あ~ら。お上品に堅苦しく食べるより、食べたいように食べたほうが美味しいってものですわよ」

 面倒臭いのだろう。牽制し合う二人の視線を遮断するようにリヴァイが身を迫り出してきた。
 言い足りなくては顔を前に突き出そうとした。リヴァイの腕で背凭れに押しやられる。
「構うな。さっきから両耳がキンキンとうるさくて敵わん」
「よく言うわ。あなたがはっきりと断ってくださらなかったから、こうなってしまったのよ。なのに他人事のように振る舞って」

 女の一方的なお喋りに耳を傾けるフリをしながらリヴァイは横目を投げてきた。
「歩き疲れて足が痛いと言ってたろう」
 テーブルの下でピンヒールを脱ぎ、足を休めていたは瞠目する。
「それであの方のお誘いを受けたの?」

 聞き返すとリヴァイの眼が女のほうへ逸れていった。彼は女とあまり楽しそうに会話しておらず、ただ相槌を打っているだけである。を休ませるためにテーブル席についたのか。
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