第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)
「あら、私に構わず裏庭に行ってきていいのよ?」
は嫌味大盛りの微笑をリヴァイにあげた。彼は小声で反論してくる。
「なんでそうなる」
「でしたら」女が会場のほうへ手を伸ばした。「あちらでご一緒しませんこと?」
談笑を目的とした数人掛けの丸テーブルがあるエリアが見えた。
女の提案はにとって甘い誘惑だった。歩くことがつらくなってきたので椅子に座りたいと思っていたところだ。
(でも三人でお茶をするのも何だかイヤ)
と眉を寄せていたら、女がもちもちとした触りの腕を絡めてきた。かつかつと歩き出す。
「さあ、行きましょう」顔を後ろへ巡らせてねだる。「リヴァイ様も早く早く」
「私はいいです。お二人で」
「遠慮なさらないで。三人のほうが楽しいと思うわ」
有無を言わさず、女はずんずんとゆく。困惑のはリヴァイを振り返った。
「リヴァイさん、どうしたらいいの」
溜息をついてからリヴァイは仕方なさそうについてきた。引っ張られる腕を伸ばして女となるだけ距離を取り、はリヴァイにひそひそと言う。
「この方を知ってるの?」
「女は俺のことを知ってるようだが、どうにも思い出せん」
「最っ低ね」
「何を想像して最低だと言ってる?」
聞き返されて、はにわかに顔を赤くした。肉体関係があるのではないだろうかと思い至ったのだけれど。考えてみるとが口出しするのはお門違いであった。
「無粋だったわ、ごめんなさいね」
でもツンと返す。リヴァイが口許を苦そうにする。
「おい、何か勘違いしてねぇか」
「相手の方を覚えてもないのに勘違いって」鼻で笑う。「どこに根拠があるのかしら」
の手を引く女の握力は強い。おそらく断っても聞き入れてくれないだろうから大人しくついていくことにした。五歩分後ろのほうでは、リヴァイがポケットに手を突っ込んで頭を垂れていた。のろのろと歩きながらぼやいた。
「どうしてこうなるんだか」