第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)
「違うの、ヒールが高いから単なる歩き疲れよ。足の裏が痛いだけ」
「やせ我慢じゃねぇだろうな。まあ、風も出てきたし中へ入るか」
リヴァイがを促した時だった。
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「こんばんは。お久しぶりですわね」
媚びるような口調。大広間からやってきたのは、ブロンドの巻き髪を片側の首から垂らしている女だった。と年にそう違いはなさそうだが若干年上に見える。
(お久しぶり?)
「……ああ」
と返答したリヴァイの反応は鈍かった。
クラシカルデザインのドレスはダークピンクで、胸許から特大の乳房が零れ落ちやしないか、他人ながら気を揉んでしまう。色っぽい仕草で女はリヴァイに腕を絡ませる。
「つれないですわね。あれからお手紙すら出してくださらないなんて。わたくしからの手紙は届いてますの?」
「届いているが、忙しくて返事を書く暇がなかった」
「読んでくださってはいるのでしょう? お茶会の招待状を差し上げましたのに、いらっしゃらなかったけれど」
「簡単に休みなど取れないもんでな」
淡々と返しているが、何やら考えるようにリヴァイは首をかしげっぱなしである。
はリヴァイをジト眼した。
(きっとどこの誰だか分からないんだわ)
女はリヴァイを知っているが彼は女を覚えていないのだろう。豊かな胸をリヴァイの腕になすりつけている女の態度からは、それなりの関係な気がしてならない。先日、リヴァイ宛に届いた薔薇模様の手紙の差出人は、もしや彼女なのではなかろうか。
女がリヴァイの腕を引いて誘いかける。
「裏庭へ行きませんこと?」
(なんで裏庭なのよ……)
庭園での破廉恥な男女を思い出してしまった。南極のようなの冷たい視線に気づいたリヴァイが口端を引き攣らせる。
「なんだ、その眼は」
「別に? どうぞ? 行ってきたら?」
「あら、さっきリヴァイ様とダンスをなさっていた――」
の存在にいま気づいたとばかりに女は気の強そうな眼をしばたたいた。
そんなに影が薄いだろうか、やけに故意っぽかったけれど。固く微笑む。
「どうも」
「悪いが彼女をエスコート中なんでな」
リヴァイは何気ないように女の手を剥がした。