第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)
「そこだ」
とリヴァイは自分を嘲笑う。
「調査兵団の兵士長。さっきのもそうだが、その肩書きがあるから女どもは寄ってくるんだ。だが所詮、上っ面に群がってくるだけで暇つぶしの遊び同然。貴族の娘が、地下のゴロツキなんざ本気で相手にするわけねぇからな」
「だとしたら、ここにいる女性たちの眼は節穴なのね」
言うと、リヴァイの口が意外そうに半開きになった。彼のことが少し分かってきたからは得意になって言った。
「地下のゴロツキさんって言うの? そんな上面だけに惑わされて、肝心なあなたの中身を見落としてる。彼女たちはかなり大損してると思うわ」
呆とした態でリヴァイはオウム返しした。
「地下育ちが上っ面」
「ええ。そんなの上っ面、ただの外見よ」口端を上げては自分の左胸を叩く。「人間はここよ。そうでしょ?」
口を利けないようで、リヴァイは群青の瞳をきらきらと瞬かせている。
だいぶ偉ぶってしまったろうか。力説したことが急激に恥ずかしくなってきて、は歌うようにおちゃらけた。
「――って、お父様が言ってらしたわ」
かぶりを振り、リヴァイは息を吐くように笑う。
「どうりで、お前の言葉じゃないと思った」
「あら、前から知ってるような口ぶりをするのね。なんだか失礼だわ」
彼の気持ちがどう変化したのかは分からないが、急にそうしたくなったのだろう。ひな鳥を温めるようにリヴァイの白無地の腕がの肩を包み込んだ。
「寒くはないか」
「ええ」
袖の縫い付け部分が、肩のラインから大幅に垂れてしまっている上着の両襟を、は摘まんでみせた。背丈は変わらないのに、肩幅や胴回りの違いは顕著で、大きさが頼もしさを実感させてくる。
「おかげさまで温かいわ」
微笑みかけると口許に拳を当ててリヴァイはぷっと笑った。
「足は冷たそうだが」
は眼をぱちっとして足許を見降ろした。ドレスの外側にピンヒールが転がっていた。
「やだ!」爪先を伸ばしてピンヒールを引き寄せる。「ちょっと痛くなっちゃって足を休めてたの」
「なんで黙ってる。知ってたら立たせてなかった。靴擦れか?」
眉を寄せてそう言い、リヴァイはしゃがんでの足を触れる。