第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)
どう言ってくれたら気持ちが静まるのか。そもそもなぜそんなことを気にして機嫌が崩れるのか、ですら分からない。
が口籠っていると、リヴァイはかぶりを振ってみせた。観念したような溜息をつく。
「一緒にいると楽だからだ。初めて会った気もしない。上辺だけの笑顔を振りまく香水臭い女どもより、といたほうが息がしやすいからだ。これでいいか」
「そんなことをさらっと言えちゃう人なんて、信用できないわ」
ピンクの薔薇の花弁のように頬を染めては顔を逸らした。その表情を見たリヴァイは満足げに目許を和らげてみせる。
「選んだ理由は、お嬢様の望み通りのものだったようだな」
「選んだって、なによそれ!」
また頭に血が昇って、今度こそは去ろうとした。手すりに素早く回してきたリヴァイの片腕で、バルコニーとの狭間に閉じ込められる。
「もういいだろう。いちいち喜怒哀楽して疲れないか」
傍らの丸テーブルから小皿を取って奥行きのある手すりに置く。
「女の苛々を解消するのは甘いものが適してる」
小皿には三色のアイスと苺やメロンが盛りつけてあった。甘い香りが空腹感を誘う。
「コックさんが盛りつけてくれたの?」
「いや? 女が好きそうなものを適当に選んできたが、嫌いなものでもあったか」
「そうじゃなくて」
不器用さを感じる盛りつけなものの、皿には数種類のアイスや果物が乗っていた。
締めつけで苦しい腹をはさすった。昼食分はとうに消費されてぺちゃんこだが相変わらずきつい。胃が膨らんだら、さらにきつくなるだろうことは瞭然である。しかしながら、
「リヴァイさんが、一つずつお皿に移してくれたの?」
「そうだが」腹を触れているを見て勘づいたように一つ瞬きをする。「腹が苦しいんだったか。それじゃ食えねぇよな。すまない、気が利かなかった」
皿を引っ込めようとしたリヴァイの手をやんわりと触れた。みるみるお穏やかになっていく心持ちで、はふわっと微笑んだ。
「ううん、いただくわ。お腹が空いてたから嬉しい」
添えられている銀のスプーンを手に取る。