第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)
は厚い胸板を手のひらでとんっと押した。それで微かに眼を丸めたリヴァイと、思ったよりも呆気なく距離を取れた。
「あなたって、女性に対して誰にでもそうなの?」
「そうなのってどんなのだ」
いけしゃあしゃあとリヴァイは首を傾けた。ムンムンとした気分で唇をもごもごさせてから、は言い捨てる。
「リヴァイさんが誠実じゃないってことはよく分かったわ。一つ勉強になりました」
ドレスをたくしあげてヒールを鳴らし、はダンスエリアをあとにした。
09
ツンとした態度で大広間を歩くのあとを、リヴァイはゆったりとついてきた。
「どこへ行く」
返事をしないでいると、知らない男に横から声をかけられる。
「レディ、お一人ですか?」
「一人というか、なんというか」
思わず立ちどまっては言い淀む。
リヴァイが肩であいだに割り入ってきた。さりげなく腰に腕が絡む。
「彼女は先約済みだ」
「そうでしたか、これは失礼しました」
一人の女を取り合った形になったが、男二人は火花を散らすこともなかった。平和的にさらりとその場が収まった。
「あなたと約束なんてしたかしら」
可愛いげなく尖るをリヴァイは構いつけない。
「どこへ行く」
唇を窄めて、は上目遣いした。泰然自若なリヴァイを前にすると自分の態度がひどく幼稚に見えてきてしまう。
「少し暑いから、バルコニーで涼んでこようと思ったの」
「喉は乾いてないか? 何か取ってくるが」
「冷たいワイン」
「分かった。取ってきてやるから、さっきの所へ行ってろ」
料理台のほうへ足先を向け、リヴァイはふと振り返る。
「変な男にくれぐれも引っ掛かるなよ」
「あなたは変な男じゃないのかしら?」
「愚問だな。その気ならとっくに部屋へ連れ込んでる。俺を誘惑したかったら、その乳臭さをどうにかしろ」
額に零れる後れ毛をひらめかせ、リヴァイは立ち去っていった。つるりとした床をはヒールで踏みつける。
「どうせガキよ!」