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水平線に消えゆく[進撃の巨人/リヴァイ]

第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)


 リヴァイはひらりと後方に逃げる。「おっと」
「まだ諦めてないわ!」一歩ずつゆったりと逃げていくリヴァイの足を、踏むべく追う。
「待て、からかって悪かった、よせ」
 そう言うリヴァイは楽しそうに見えた。そしても愉快になっていた。

 まさに女心と秋の空。彼の低俗な発言に、いましがたまでムッとしていたことをすでに忘れてしまっていた。波長が合うのだろうか。実のところ、リヴァイとのやり取りをは小気味よく思っていたりするのだ。

「だめよ! もう一度踏まないと気が済まないんだから!」
 ダンスなどそっちのけで、は夢中になってどんどんリヴァイを追いつめていく。焦らずゆったり後退るリヴァイの背中が、後方で踊っている男女にぶつかった。
 瞬時に引き締めた顔を巡らせ、リヴァイが謝る。
「すまない」
「気をつけなさい。子供みたいに、まったく。君らだけの空間じゃないんですよ」
 邪魔をされた男女は、ぶすっとした態度で離れていった。

「やれやれ」
 細められていくリヴァイの瞳に熱が籠ったように見えた。右手がの肩甲骨の下を優しく包み込む。
 計ったように演奏が変わった。緩やかな曲調は妖艶さ溢れるスローリズムだ。
「いい大人が怒られちまった。だからよせと言ったろう。困ったお嬢様だ」
「リヴァイさんこそ、悪乗りが過ぎたのよ」
 彼の深い双眸を見つめていると、は夢を見ているような気分になり、それで瞳を震わせた。直接素肌に触れるリヴァイの指先が、じわじわと胸をときめかせていく。

「左手は肩の少し下だ」
 言われるままにリヴァイの右肩に手を添えた。盛り上がった筋肉は、しとやかにステップを踏むごとに僅かに痙攣した。
 また女心と秋の空である。楽しかった雰囲気は、甘く空想的な情調に変わってしまった。妖美な音色と艶かしく寄添いながらダンスをする男女に、は感化されたのか。

 重ね合う片手が汗ばむ。気にして隙間を作ろうとするとリヴァイに強く握り返された。
 円を描くようにゆっくりと回転しながらフロアを移動していく。が、とリヴァイの狭間は不自然な空間ができていた。
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