第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)
リヴァイが作る檻の中に閉じ込められて、
「それとも、俺を撃退しようとしたのか」
耳許でそう囁かれた。吐息がくすぐったくては首を竦める。
「違うわ、わざとじゃないの」
の腹の前で互いの腕を交差させたまま、ゆらゆらとただ揺れる。辺りで踊る男女は次々にステップを変えていくのにリヴァイのリードが停滞していた。
タチの悪い当たり屋が、弱い立場の者を陥れるような感じで耳許に顔を寄せてくる。
「あんな痛みは初体験だ。世の中には女に踏まれて喜ぶ男がいるようだが俺は違う。どうしてくれる。足が使いものにならなくなったら立体機動に支障が出るんだが」
イヤリングがたゆたう耳に、吹きかかる生温かい息。両手を握られており、は左耳を覆いたくても叶わない。それで左肩を上げて耳を庇った。
「あとでお医者様を派遣するわ」
「神経が死んでいたら間に合わん。どう責任を取ってくれる」
「もしそうなら、いま踊れてないと思うけど。意地悪よ、ちゃんと謝ったじゃない。ほかにどうしろっていうの」
は弱った。交差している腕で腹を締められ、リヴァイとの密着度がさらに深まる。
「責任の取り方はいろいろあるが、は女だろう? 互いに最高な心地になれる、手っ取り早い方法があるじゃねぇか」
は耳を赤らめた。聞き返すのは憚られたが、リヴァイが予想通りの答えを放ったら、尖った武器でいま一度足を踏んづけてやる気でいる。
「身体で取ればい——」
最後まで言わすまい。さあ、けしからぬ男の足を思い切り踏んであげよう、とは右側に身体を回す。が、知恵の輪のように腕がきつく絡まって捻られなかった。
「あら!?」
背後では、ことさら可笑しそうにリヴァイが吹き出していた。
「馬鹿。そっちじゃ抜け出せない、こうだ」
繋いだ左腕で輪っかを作り、リヴァイはを再びくぐらせた。絡みが取れて向かい合う。
「解いたことを後悔するのね!」の艶めく唇は、いつの間にやら悪戯っぽく笑っていた。「ずっと絡ませておけばよかったのよ!」
両手を繋いだまま、ピンヒールの片足を大げさに振り上げてリヴァイの足を狙う。