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水平線に消えゆく[進撃の巨人/リヴァイ]

第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)


 羞恥だらけの顔をはこっそり上げた。するともなく膝をすり合わせる。
「他人のなんて気持ち悪いと思うわ。でも身体の奥が……」
「熱くなるんだろう」

 言われてこくりと頷いた。
 純情ぶっているわけではない。何も知らない純真無垢な少女では決してないのだから。ただリヴァイを異性として強く認識してしまったことが、の心をひどく乱すのである。

 眉尻を少し下げてリヴァイは小さく笑う。
「悪くない」
「何が?」
「いや、こっちの話だ」
 もしかしてリヴァイもミツバチに魅了されたのか。本人は混濁中なのでそんな考えには至っていないけれど。

 静電気を防ぐような勢いでは手首を掴まれた。一瞬びくっとしたが、次の瞬間にはリヴァイに引き起こされていた。
「とっととずらかるぞ。仕方ないからエスコートしてやる」
 そう言い放ったリヴァイは、ひどく傲然に見えたのだった。

08

 庭園をあとにして螺旋階段を登っていく。せかせかしたような金属質の音が入り乱れる。リヴァイに引っ張られていると彼の踵の音だ。
「私ドレスなのよ、踏み外しちゃうわ」
「手を結んでいれば平気だ」

 プリンセスラインのロングドレスは足許の視野が悪い。青銅色の階段に爪先が乗ったのかも確認しづらい。案にたがわずは空足を踏んだ。
 脳天から出るような高い悲鳴を上げると、即座に手首を強く引かれた。数段前を行くリヴァイが半身を捻って見降ろしている。

「本当にやるとはな」
「だからドレスなのよって言ったじゃない。エスコートしてくださるなら、もうちょっとゆっくり歩いて」
「ここから早く抜けたいだろ」
 そう言って、お願いなど聞かずにリヴァイはまた手を引く。
「もう! 強引な方ね!」
 滑らかそうな生地の背中に慨嘆を零し、内側のパニエごとドレスをたくしあげる。急ぎ足気味には階段を駆け登った。

 大窓を抜けて再び煌びやかな大広間へ出た。薄闇に慣れた両目では、シャンデリアの光が眩しくて、は顔を背けて眼を眇めた。
 早い歩調を緩めることなく、リヴァイは大広間を突っ切っていく。
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