第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)
の声はうわずる。
「し、信じられない。ここに人がいるのよ」
「貴族様にとっては平生だ。珍しいことでもない」
嫌そうにしていながらもリヴァイは平然とした様子だ。
「だって」言い淀むからリヴァイは視線を外す。
「そんなに顔を真っ赤にすることじゃないだろう」
はすり寄るようにして訴えた。
「平気でいられるわけないじゃない。声が聞こえるんだから」
「悪い、処女には刺激が強過ぎたか」
ばか、とリヴァイの腿をぺしりと叩く。叩いてから、にわかに鼓動が跳ねては手のひらを凝視した。
スラックス越しに感じたのは凝縮された熱い筋肉だった。傍らで余裕そうにしているリヴァイも、情事中の人と同じく男なのだ。じわじわと意識させられてくる。
近づき過ぎないほうがいいかもしれない。尻をずらして、はほんのちょっと距離を取った。
「そもそも年の差が可怪しかったわ。ずいぶん若い女性と、お、おじさんだったのよ」
「それを言うなら、俺とも変わらない」
肯定されたことで彼らの状況と重なり、リヴァイに対して妙な警戒心が生まれてきた。加えて、妖艶な薔薇の香りに混ざって耳に入ってくる淫靡な声が、を変な気分にもさせてくる。
「あの人たちって、こ、恋人なのかしら」
「どうだかな」
「ち、違うの?」
「社交界ではよくある光景だろう」ハーブ畑に向かってリヴァイは顎をしゃくる。「男女の関係が純粋なものとは限らない。あれもそうだな」
「遊びってこと? 次元が違うわ。それにこんな外で……するものかしら」
イヤリングをそぞろにいじると、掠った耳たぶが指に熱かった。落ち着かなく恥じらうを、切れ長なリヴァイの眼差しが見つめてくる。
「さっきからそれ、本気で言ってるのか」
「何を?」
「そんなだからお前は狙われる。無垢な女がベッドでどう乱れるのか、男は抱いてみたくなる」ときめく囁き声が言い、リヴァイはの腰に腕を絡めてきた。「潮時だ、もうここから」
ぞくりと粟立つ。
「やっ」
反射的にの手は振り上がる。激しく動揺していたから、手のひらではなく、四本の指先がリヴァイの左頬にぱしっと当たった。