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水平線に消えゆく[進撃の巨人/リヴァイ]

第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)


「こういう服が好きなのか」
「ええ。だけど」
 揺らしている足首を交差させ、困り笑いで首を傾けた。
「正式なドレスはちょっと苦手かしら。コルセットでお腹が苦しいんだもの」
「そんなもんか」
「そんなものよ」

 ぽかんと口を開け、未確認生物を発見したような横目でを見ながら再びリヴァイは腰掛けた。
「なあに? 人を珍獣みたいに見ないでくださる? それとも変なことを言ったかしら」
「いいや。ただ――世の中にはとんちんかんなことが多いと思ってな」
 リヴァイはおおいに首を捻って腕を組んだ。

 またバルコニーに男が現れては消える。リヴァイが虫避けになってくれているおかげで、どうやら平和を確保できているけれど。
 知らない男と過ごすよりは人柄を知っているリヴァイのほうが気は楽である。ついつい初対面を装わなければならないことを忘れてしまいそうにもなるけれど。

 はちらっとリヴァイを見る。
「ここに来たのは、リヴァイさんもお庭を眺めたかったからなの?」
 すらりとした鼻筋の横顔。何かを発しようとしたリヴァイの口が小さく開くが閉じた。言い直すように再度開く。
「詫びにきた」
「詫び?」聞き返したは、すぐさまピンときて顔面が火照る。「まさか挨拶のときの?」
 ああ、と頷きもしなかったリヴァイは横柄で、背凭れに預けた背を少々滑らせた。全然詫びている態度ではない。

 温もりを思い出してしまった左手の甲を撫でつつ、は顔を背けた。
「知らなかったのなら仕方ないけど、あんなふうに無理矢理手を取ったらだめなのよ。女性に伺ってからじゃないと、マナー違反と言われてしまうわ」
「知ってる」

 知っていたらしい。発言にちょっと目が飛び出そうになったが唇を突き出してぼそぼそと言う。
「キスも……唇をつけたらダメなのよ。あなたと私は親しくないでしょう」
「そんなのも知ってる、ガキじゃあるまいし」
 当たり前だろうと言わんばかりの倦怠な物言いだった。

 ならばなぜキスをしたのか。火照り続ける面容ではがばっと向き直る。
「からか」
 からかって楽しいのか、と文句を言おうと思った。予想に反して、あっさりとした目顔のリヴァイと目が合ってしまう。それでの目線が彼の唇へと徐々に引き寄せられていった。
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