第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)
そしてを傍らに座らせ、やにわに腰を上げた。目の前で片膝を突く。
「そういやさっきも躓いてたな。靴が合ってないんじゃねぇか」
と言ってリヴァイはの足首を掬う。
は咄嗟に膝許を合わせて押さえつけた。長いドレスなので捲れることはないだろうけれど念のため。
「気にしてくださるのはありがたいけど、せめて予告してもらえるかしら」
能面のリヴァイが顔を上げた。
「足を見せてもらう」
「いまごろ遅いわ」
「広間でも捻ってたろ。足首を痛めてないか」
ラメがきらつくピンヒールの足を、傾けたりしてリヴァイが触れる。少し持ち上げられているので下着が見えないか心配だ。
「だ、大丈夫みたいね。痛みとかないし」
「しっかし武器になりそうな踵だ。はこういう靴が好きなのか」
「普段はもうちょっと低いヒールを履くから、正直に言うと苦手だけど」
足首から手を離したリヴァイは、今度はふんわりと広がるドレスの裾を摘みあげた。下着である生成りのパニエが丸見えになる。
「着ているだけで重そうだ」
「ええ。絹ってずっしりと重いの」
それにしても無遠慮すぎる。は口端をぴくぴくさせて微笑み、
「さておいて、女性のスカートに触れるのはどうかしらね」
裾を撫でつける拍子に不躾なリヴァイの手を払った。
曲げた膝に片腕を垂らし、リヴァイは見上げてきた。
「明らかに動きづらそうで、こんなひらひらしたもんを着ないといけないとは、女ってのは不憫だ。そう思わないか」
バルコニーから差し込む明かりと月のみの暗い庭園。リヴァイの双眸が探るような瞳に見えたけれど幻覚かもしれなかった。
別段勘案せず、は伸びやかに微笑する。
「そんなことないわ。華やかな服を纏えるのは女性だけの特権なのよ。髪を結ったり、アクセサリーを身につけたり、おしゃれって気分まで楽しくなるの」
夢心地で喋るを尻目にリヴァイは呆気に取られているように見えた。は眼を瞑っており、弾む心が足を交互に揺らしている。
「男性と出掛けるときは、ちょっと背伸びして特別な服を選んだりして。だって可愛いって思ってもらいたいでしょ」