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水平線に消えゆく[進撃の巨人/リヴァイ]

第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)


「温かいもの」
 思いを巡らせながら、は息を吐くようにして反復した。
 頷いたフェンデルの眼差しが優しい色になる。
「同じ班というからには、ずっと一緒に鍛錬しとるんじゃろう? は何か感じはしなかったか?」

 たった三ヶ月でリヴァイとは色々あり過ぎた。振り返ると嫌な思い出ばかりじゃないことに気づく。言いあった、笑いあった、泣かせてもくれた。
 は切なく微笑んで、そうしてやんわりと頷いた。
「私も同じ印象を抱いています。彼の胸の中に、温かいものがあるとずっと感じていました」
 自分でも驚くほどに、素直な気持ちを吐き出せたのだった。

06

 一通りの挨拶が終わり、あとは自由に楽しんでよいとはフェンデルに言われた。

 会場の壁よりに料理を乗せた台がセッティングされている。芳ばしい香りを放つ肉料理や魚料理、甘い香りのデザートなどが大皿に盛られていた。どれも食欲をそそるほど美味しそうだが、
「お腹は適度に減ってるのよ。でも入りそうにないわ」
 口惜しい気持ちでは固い腹回りをさすった。刺繍を施されたドレスの内側では、コルセットが引き締めの仕事を現在進行形で果たしていた。

(これ以上苦しくなると本当に歩けなくなっちゃう。飲み物だけにしておいたほうがよさそうね)
 垂れが掛かったローストビーフに恨めしい溜息をつき、銀の盆に並んでいるシャンパンを手に取った。
 目の前ではコック帽を被ったシェフが肉を焼き上げている。フライパンに振られて、ひっくり返った肉の音まで恨めしく思う。
「そろそろ焼き上がりますが、ステーキはいかがですか?」
 シェフが勧めてきたけれどは首を振った。
「ありがとう。さきほどいただいたので、もう充分ですわ」

 フライパンから皿に滑っていく厚手のステーキ。おそらく庶民はこんな贅沢なものはめったに食べられないのだろう。むろん調査兵団でもお目にかかったことはない。貴族と一般市民の格差を深く感じた。
 自由にしてよいと言われたが、は行く当てもなくその場で佇んでいた。ふいに数種類のデザートが盛られている皿を横から差し出される。
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