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水平線に消えゆく[進撃の巨人/リヴァイ]

第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)


 尽力するなど言っただろうか。とんだ食わせものである。は青ざめていく顔をなんとか気取られないように必死だった。フェンデルを思って隠し通していたというのに、まさかエルヴィンの口から露見するとは思わなかった。
 フェンデルは喉から声が出せないようだ。待ってくれというふうに、震える皺くちゃな手を突き出している。

「有望な青年を紹介していただき、まことにありがとうございました。彼の活躍が未来の架け橋になることを、私は強く願っています」
 まるで死んで橋の一部になるような言いようだった。こんなことをさらりと血縁者に放てるエルヴィンは、氷の心臓を持っているのではないのかと思ってしまいそうになる。
「では失礼します」
 笑みを変えずにエルヴィンは腰を折って背を向けた。フェンデルは手を伸ばして口を開くが、喉がからからなのか掠れ声は届かない。

 一緒に去ろうとしているリヴァイが、後ろ髪を引かれるようにふと振り返った。
「俺の班には所属する。行動も常に一緒だ。碌に実力もないが、無事に帰ると一丁前に言っていた。どうなるかは知らんがな」
 尻にかかるテイルコートの裾を翻して去っていった。

 どういうつもりで言い残したのだろう。なんとかフェンデルを安心させようと、配置されたのは荷馬車班だと嘘をつこうと思っていたというのに。リヴァイと同じ班だと知ったら、そんなでたらめを信じてくれなくなるではないか。
 居たたまれない気持ちで、しょんぼりと肩を落としているフェンデルを見る。

「おじさま……。嘘をついてごめんなさい」
「いや」フェンデルはかぶりを振る。「わしを気づかっての嘘だったのじゃろう」
 は俯いた。華やかな空間にいるというのに二人だけ取り残されてしまったように見える。

「エルヴィン。あやつは自分にも厳しいが、他人にも厳しい奴じゃ。昔からまったく変わっとらん」
「昔から?」
 頷いたフェンデルは近くの椅子に腰掛けた。
「曲がったことが嫌い、周りに反対されても自分の信念を曲げない。こういう気質は嫌いではないが、ときに敵を作るんじゃな」
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