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水平線に消えゆく[進撃の巨人/リヴァイ]

第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)


 団長であるエルヴィンに頭を下げられるとは思わなかった。いまは貴族の立場なのだから可怪しくはないのだろうけれど、変な汗が出てくる。

「いえ、お気になさらないでください。お父様が楽しくしていらっしゃると、私も嬉しいので」
「よろしければ挨拶をさせていただきたい」エルヴィンはフェンデルを窺う。「よいでしょうか?」
「もちろんじゃ。わしが死んだあとはが跡目じゃからのう。いまのうちに媚を売っておいたほうがよいぞ」

 満足そうに頷いたフェンデルが何を考えているのか理解不能である。が調査兵だということが、おそらく頭から抜け落ちてしまっているのだろうけれど。

 片手を後ろへ回し、エルヴィンは腰を曲げた。
「調査兵団、十三代目団長を努めさせていただいております、エルヴィン・スミスです。以降お見知りおきを」
 実直そうな蒼い瞳だけでを見据え、片手を差し出した。
 慣れてきたはずの作法なのに、緊張での脚が細かに震える。淡いコーラルピンクのネイルを施してきた手を差し出す。

「・フェンデルと申します。これから先も、お父様と良き間柄でいてくださいね」
「願ったりです」
 柔らかな手つきでの手を握り、エルヴィンは甲にキスをするフリをした。再び顔を上げた彼は優しく微笑んでいた。その瞳は、のことをなんら疑っていないものに見えた。

 一安心したのも束の間、次いでエルヴィンはリヴァイに目で合図をする。
「お前も挨拶をしておきなさい。くれぐれも失礼のないようにな」

 リヴァイは両ポケットに手を突っ込んでいた。やれやれというふうに浅く溜息を零し、ポケットから手を抜いて前に出てくる。
(やだ、挨拶なんてしたくない)
 リヴァイの瞳に疑いの色などこれっぽっちも見られないのに、の心臓はバクバクと激しくなる。挨拶をするようにと余計なことを勧めたエルヴィンは、もうそっちのけでフェンデルと談笑を始めていた。
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