第3章 :魔法と逢瀬と魅惑(レトロな便箋の概要)
「そうですわよ。調査兵団といったら屈強な殿方が多くいらっしゃるのでしょう? 三ヶ月超住み込んでいて恋沙汰がないだなんて、女としては寂し過ぎますわ」
腕に横顔を凭れ、は薄ら笑いする。
「三ヶ月で恋に落ちちゃうのは、ちょっと早過ぎない?」
「いいえ。恋に落ちる瞬間は分からないものです。出会ってすぐだったりなんて、よくある話ですわ」
メイドたちのしなやかな手がの背や腰を滑る。極上エステ気分に微睡む。
「だったら、兵団には私の心を奪ってくれるような人はいなかった、ってことかしらね」
「分からないですわよ。恋に落ちる瞬間がいつ訪れるか、それは本人であっても予想できないのですから」
女に生まれたのだから恋愛をして楽しみたいという思いはある。精神的な部分で女子力が多少落ちていることも否めないが――
(でも社交界に出席するような貴族の男性はないわね。ちょっと面倒だもの)
と思ってから、こっそり自分を笑った。
身のほど知らずである。実は貴族でない一般人のを彼らが相手にすることは、そもそもないに等しいのだから。
ふうわりとした繊維の感触を背中に感じた。うたた寝していた瞳を上げると、ガウンを掛けてくれたメイドが満足げに微笑んでいた。
「終わりましたわ。次は着替えに移りましょう」
部屋に戻ると準備をしていたメイドたちが一斉に振り返った。の手を引いて中央に立たせる。
「お待ちしておりましたわ。時間が押しています、急ぎましょう」
数人のメイドに囲まれて一気に着付けが始まった。裸の上半身にチューブタイプの薄手の肌着を纏う。
「ブラジャーはしないの? これだとドレスに響かない?」
「コルセットを着用しますから必要ないのですよ」
「そういうものなんだ」
心許ない姿で大きな鏡に映る。背後にいるメイドが、レースが施された白いオーバーバストタイプのコルセットを胸許に回した。
胸部から腰部までを前のホックで留めてから、後ろにいるメイドが横から気合いの顔を見せた。
「では、いきますわよ」
「何を?」
「息をぜ~んぶ吐き出してくださいましね」