第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
月の光がたおやかに包んでくれるような、むしろ厚情に溢れている人だとよく分かっている。そう伝えたいのに、やっぱり声が出ないから、違うのだとさらに大きくすり合わせた。
「分かった。よく分かった」
リヴァイに後頭部を優しく叩かれて、さっきよりも強く胸許に押しつけられた。やっと喉を通った言葉は泣き笑いだった。
「窒息しちゃいます」
襟に切れ込みがあるリヴァイのシャツ。覗く素肌に浮いているのは、まだ引かぬ流汗。爽やかな石鹸の香りに混じる汗の匂いは、を探して走り回ってくれたものだろう。だからほんのり匂いはしても、ちっとも嫌なものに思わなかったのだった。