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水平線に消えゆく[進撃の巨人/リヴァイ]

第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)


 どうもあながち見当違いでもなかったようだ。
 どの兵士も当たり前にこなせることが、には教え込むのに人並みの数倍時間を費やす。指導をしているときはリヴァイもしんどい。
 けれど、の右手にある剣だこを見たとき、強い達成感と充実感を感じた。ごく小さな進歩だというのに、とても嬉しく思った。

 いままで指導してきた兵士に対しても、技術に磨きがかかればもちろん満足感はあった。が、苦労が多い分、満たされる量は比べものにならないのだ。
 困り顏でリヴァイは笑う。認めるのはどうにも気持ち悪く思うが、
「どうやら可愛いく思っているらしい」
 
 もうしばらく駆け続けて、背中や胸板にじんわり汗を掻き始めたころ、さらに気づいてふと立ち止まった。

 夜更かしをしている数軒の家の明かりが窓から透ける。それ以外は外灯も灯らない真っ暗な大通りで、リヴァイの頭が冴え始めた。
「倉庫か」
 暗闇に呑まれていった呟き。夕方に班を解散したあと、はグンタから片付けを命じられていた。脱走などと、いまだ自分でも確信が持てずにいる要素に振り回されるよりも、なんらかのハプニングで倉庫にいると考えられないだろうか。
 野良猫しか歩いていない闇の街をリヴァイは急いで引き返していく。向かうは本部である。

 ※ ※ ※

 土埃っぽい臭いにも慣れてしまった。倉庫では寂しく体育座りをしている。上部にある小さな格子窓から、小さな夜空を眺めていた。今宵は鮮やかな黄色をした半月であった。
 は溜息を零した。外からは微かに虫の鳴き声がする。生き物の気配はそれだけだった。

「別にね、閉じ込められたからって焦ることなんてないのよ。だって明日になれば、誰かが絶対来るもの。少なくとも私の班の誰かは来るわ」

 それは夕方のことである。訪れた誰かによって外から倉庫の鍵を掛けられてしまったのだ。奥のほうで片付けをしていたには気づかなかったのだろう。
 きゅるっと腹が鳴った。もう何十回目か分からない。へこんだ腹をさすりながら切なく笑う。
「ごめんね。でも朝になればご飯が食べられるから」
 弛んだ頬は、しかしすぐに戻る。
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