第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
何もかもがオルオに敵わないとはいえ、年下に大きな態度をされると面白くない。しかしながら実力社会の班では言い返す資格などにはなかった。
「分かったよ!」
ちょっといじけ気味に吐き捨てた。ペトラが申し訳なさそうに手を合わせて小さく頭を下げてくれたが、リヴァイは振り向きもしなかった。
散らばっているアンカーや使用済みガスボンベなどを黄色い網カゴに放り込んでいく。
「小中高って全部文化部だったからな~。運動部みたいに一年が片付けをするっていう経験がないのよね」
ピアノを小さいころから習っていたから――という単純な理由でずっと音楽部に所属していた。大学では勧誘された軽音サークルに入ってキーボードを担当した。学生のあいだ嗜んでいたピアノが社会に出て役に立つことはなかったけれど。
暮れる太陽をぼけっと眺めながら、はふと佇む。
「というか……これっていじめじゃないわよね?」
マイナス思考を吹き飛ばすように一人笑いをした。オルオはともかくも、みんないい大人なのだ。違う違うと首を振って片付けに専念した。
「重い~。もうガスボンベやだ~」
カゴを持って灰色の土壁の倉庫へと、はよたよたと向かう。
「よいしょっと」思わず零してしまった独り言。
一度カゴを置き、茶褐色をしている金属製の引き戸を開けた。取っ手に引っ掛けてある大きな錠前が揺れ動く。
土臭さや埃臭さが入り交じった倉庫内は薄暗くて不気味だった。色んな用具がごちゃごちゃと置き放題になっている中へ、再びカゴを持っては足を踏み入れた。
「適当に置いてっちゃえば楽なんだけど、あちこち置いたら次に使うとき分からなくなっちゃうのよね」
ガスボンベを並べておく所は、奥のほうにある大きな棚が死角になっている所にある。
「あった、あった」
いつもの要領でしゃがみ込み、は一本ずつボンベを戻していった。
※ ※ ※
特別アイテム、「貸し切り木札」を使用してリヴァイは浴場で入浴中だった。
風呂場はもくもくの湯気に満たされていた。熱めの湯に浸かり、両手で掬った透明な湯を顔面に掛けようとして、ふと思い留まる。
「……一番風呂じゃねぇからな。誰のケツが沈んだか分かんねぇのに危険だ」
手を離してばしゃっと湯煎に戻した。