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水平線に消えゆく[進撃の巨人/リヴァイ]

第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)


20

 訓練場の森の中で、リヴァイが巨人の模型を操っていた。ロープをいっぱいに引き、近くの木の幹に巻きつけて固定する。
「こんなもんか」
 うなじを狙うが何度失敗してもいいように、模型を出しっ放しにするためであった。
 二人して模型を見上げる。

「立体機動を維持しながらうなじを削ぐのは、お前にはまだ無理だろう」
 リヴァイは斜め上に向かって指を差す。
「あの枝に飛び移って、立ったままでいいから削いでこい」
 立体機動がいまだ苦手なは密かに溜息をついた。「はい」
 グリップを両手で握って距離を目測する。目標の枝までの高さは十メートル超あった。
(高いな)

 空中でアンカーの差し替えができないは、一回のワイヤー射出で枝まで辿り着かなければならない。高さに怯みながらも、トリガーを操作して目をつけた場所にワイヤーを飛ばす。アンカーは木屑を散らして望み通りのところに突き刺さった。
「よし。次は」

 木に向かって張っている黒いワイヤーを二本とも強く引っ張る。しっかり刺さっていることを確認した。
 後ろで様子見しているリヴァイの溜息が聞こえてきた。
「またか。そんなふうに確認する奴はどこにもいないぞ」
「訓練兵団に入りたての子ならいるかもしれません」
 と言うと、頭を振ったリヴァイにまた溜息をつかれた。

 というのも、アンカーの刺さり具合が弱くて二メートルの高さから一度落下したことがあったのだ。すっかり恐怖症になってしまったは、こうしないと安心できないのである。
「いいから早くガスを噴かせろ」

 覚悟の深呼吸をしてからはトリガーを引いた。腰許の装置からガスが噴き出て瞬時にワイヤーが巻き取られていく。
 怖じ気づいたのガス量は少なめで、もうちょっとで枝に降り立てるというところで、重力によって落ちそうになった。小さな悲鳴を上げて、咄嗟に枝に両手を掛ける。

 下から容赦ないことを言われる。
「俺は助けにいかない。落ちたくなかったら、なんとかしろ」
 の呻き声が漏れた。
「雲梯は苦手なのに」
 両腕に力を込めながら片足を幹に引っ掛ける。リヴァイから見たら、おそらくカエルのような格好悪い姿に違いない。
 肘を掛けて悪戦苦闘しつつ、はなんとか枝によじ登った。
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