第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
班長が喋っているというのに班員は気が散っていた。さきほどから色んな横目がをちら見してくる。
「次の壁外調査では、初列索敵を任される。陣形の要となる位置づけだということを、充分心得ておけ」
とても物言いたそうにしている班員に気づいているのかいないのか。リヴァイは続ける。
「おのおの訓練場や演習で顔見知りだろうが、中には知らない者もいるだろう。一人ずつ紹介を」
「あの~」
彼の言葉を止めたのは、勇気を持ってそろりと手を挙げたオルオだった。
「なんだ」
「一人変なのが混ざってるんですが」
「変なの?」リヴァイは五人を見渡す。「別段着衣が乱れてる者はいないが」
自分のことだと思ったは身を窄めた。リヴァイも分かっていると思うが、なぜとぼけるのか。
「いえ。前がだらしなく開いてるとか、シャツが皺だらけとか、そういう変とかではなくてですね」
「彼のことです」と、金髪の髪を後ろで結んでいる男兵士がに目配せした。「兵長が指導をされていることは知っていますが、これはどういうことでしょうか」
「どういうこととは? エルド」
リヴァイは僅かに首をかしげた。飄々といった態度だ。
猫目の男兵士が疑問を突く。
「どうして俺たちと一緒に並んでいるのか、ということです」
「どうして? 疑問など抱かずに、そのままを見れば分かるだろう、グンタ」
ああ、といったふうに得心の笑顔でオルオはぽんと手を打った。
「俺たちの補助に使うんですね! 森で模型を操作させたり、ボンベのガスを補充させたり、もろもろの道具を持ってこさせたり! なるほどです、手伝いがいたほうが訓練も捗りますしね!」
リヴァイはオルオをぎろりと睨む。「違う」
びくっと飛び跳ねたオルオの顔は恐怖で皺が増えた。皆の顔を見回しながらリヴァイは言う。
「顎で使うために、はここにいるんじゃない」
「つまり彼も、精鋭班の一員……という認識でよろしいんでしょうか」
自分の口から出る言葉を、ペトラは頭に理解させるような感じで言った。
「そうでなければここにはいない。俺は不思議でしょうがない。なぜお前らが、そんな簡単なことを呑み込めないのか」
そんなことはない。彼らの反応はごく普通な感覚である。