第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
――そして現在に至る。
本部と兵舎を結ぶ渡り廊下に差し掛かった。両脇に植えられた木は夜嵐で煽られ、横殴りの雨で足許はびしゃびゃだ。
リヴァイの後ろにはやはり。カルガモの親子かと思えば可愛いものだが、そんな雰囲気ではまったくない。
雨をしのぐための簡易的な屋根に、鉄砲弾のような激しい雨滴が叩きつけてくる。耳にうるさいほどの騒音がやかましい。
横方向からは強い風がリヴァイとの髪をたなびかせていた。そして、いまにも背反してくるだろうというリヴァイの予期は当たる。ずっとむっつりしていたが強気に突っかかってきた。
「どういうことですか」
立ち止まり、冷静さを保ってリヴァイは向かい合う。
「何がだ」
「何がじゃないです。エルヴィン団長がおっしゃってたことは本当なんですか」
「俺の班にお前を入れたことを言ってるのなら、そうだ」
「どうしてですか! 団長は荷馬車班にと、おっしゃったんですよね?」
表情を一切変えないリヴァイがは憎いらしい。両手の拳が白くなって骨が盛り上がっている。
「なぜそんなに怒る。巨人の模型を見て凄い迫力だと安直してたお前だ。どこの配置になろうと構わないだろう」
「自分の命が関わってきたら、安直でいられるわけないじゃないですか。長距離索敵陣形のことを、先日の講義で教わりました。索敵班と荷馬車班じゃ、無事に帰ってこれる確率が天と地ほど違うって」
壁外調査に関する知識を、やはりは身につけてきたあとだったようだ。
「生存率は確かに大きく違う。だが荷馬車班が必ずしも安全地帯とは限らない。前回も一台、巨人に踏みつぶされて六人が死んだ。立体機動技術が中途半端なお前が、生き残るか生き残れないかは、差し詰め運だ」
荷馬車班も被害に合うのだと知っての顔が青ざめたように見えた。季節のわりに冷たい暴風のせいかもしれないけれど。
「それでも」と唇を噛んでからは食ってかかってくる。「それでも索敵班よりは、生きて帰れる可能性は高いじゃないですか」
リヴァイは毅然として発した。
「高い低いの問題じゃない」