第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
唇を噛み締め、リヴァイはリストをぐしゃぐしゃに掴んだ。隣ではハンジが気まずそうに鼻頭を掻いていた。
「あー、じゃあ、はうちが引き受けるよ。何とか形になるよう教え込むわ」
「ハンジの分隊か。陣形でのの配置だが、なるべく中央後方――そうだな、荷馬車班がい」
「待った」
踏ん反り返って、リヴァイはエルヴィンの言葉を遮った。全員の視線が集まる。
「さきほどの条件だが追加がある」
こう来ると分かっていたのだろう、エルヴィンは小さな溜息をついた。「言ってみなさい」
「俺の班にもう一人、入れたい奴がいる」
室内がざわっとしだした。リヴァイ、と呆れ混じりにエルヴィンがかぶりを振る。
「俺の言葉は最後まで聞こえなかったか? 彼を荷馬車班に配置するようハンジに指示した。これでもお前の苦労を汲み取っているつもりだぞ。陣形の中でも生存率が高い位置じゃないか」
「お前こそ俺の言葉は聞こえたのかよ。耳クソが溜まってんじゃねぇのか」
さらにエルヴィンは大きな溜息をついた。額に手を添えて、疲れたように背凭れに深く寄りかかった。
無理に笑っているハンジが頭に手を伸ばしてきた。「あなたこそ大丈夫?」
リヴァイは彼女の手をぱしっと弾く。
「頭がとち狂っちまったとでも言いたいのか。それはてめぇだろう、巨人バカが」
「ハンジがそう思うのも無理はない。分かってるのか、リヴァイ。お前の班は」
エルヴィンの言葉を引き継ぐ。
「初列索敵、及び周辺のフォローだ」
「何を考えてる、困らせるのもいい加減にしてくれ。を精鋭班に入れて、班が機能すると思うか。お前の班は陣形の要なんだぞ」
「ならばエルヴィン。今回の壁外調査からを外せ。できないのなら条件を呑め。呑めないのなら、俺は降りる」
分隊長たちは納得いかない様子だが、リヴァイが降りると口にしたことで副分隊長たちがまた不安を見せ始めていた。
もう一遍リストに目を通しながら、痒そうにハンジは頭を掻きむしる。
「作戦の内容にしてはやっぱり戦力が少ない。加えてリヴァイがいないとなると……被害は二倍ってとこかな」
首を回し、
「仕方ないよエルヴィン、ここは折れて——」