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水平線に消えゆく[進撃の巨人/リヴァイ]

第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)


 二人の青年が仁王立ちしていた。彼らは馬の模様のワッペンがついた茶のジャケットを着ている。ズボンも同系色で、胸許のサスペンダーのようなベルトが脚のほうまで巻いてあった。男たちの表情が険しいので、自ずとは緊張に縛られたのだった。

 ※ ※ ※

 王都から招集を受けた帰りだった。本部へはまっすぐ帰らず、ウォールシーナの紅茶専門店にリヴァイは立ち寄っていた。
 ずらりと棚に並ぶ紅茶缶。目当てのものを見つけたけれど、手を伸ばすが届かない。一番上の段にある黒い丸形の缶へは、爪先立ちになっても届かなかった。

「一番上に置くんじゃねぇ、クソが」
 小さく愚痴を零した。と、自分の手の横に大きな手が伸びていった。紅茶缶をいとも簡単に掴む。
「この銘柄でよろしいですか?」
 代わりに取ってくれた男が缶を差し出してきた。

 男が男に取ってもらう屈辱。苦い思いでリヴァイは受け取った。
「ああ、これだ。悪いな、モブリット」
「いえ、このくらい」
 モブリットと呼ばれた背の高い青年も、苦いものを食べたような顔の笑みをした。リヴァイの顔を見て、差し出がましいことをしたのかもしれないとでも思ったのか。

「このあとはどうされますか? ほかに買い物はありますか?」
「俺の用事はここだけだ。お前は何かあるか? ここまで来ることはめったにないんだ、遠慮すんな」
「お気遣いありがとうございます。僕は特にありませんので、外で馬車を拾って帰りましょうか」
 そうしようと相槌を打って、リヴァイは会計を済ませるために勘定台へ向かった。洒落た袋に品物を詰める店員を尻目に、モブリットが話しかける。

「今日のお供、僕で不都合はなかったでしょうか」
「いや、お前でよかった。ハンジが腹痛を起こしてくれて、むしろ万歳したいほどによかった」
「素直に喜んでいいんでしょうか。そこまで仰られると、ハンジ分隊長が些か不憫に思えてきます」
 とモブリットは苦笑し、
「しかし本日の予算審議での活躍、お見事でした。歯に衣着せぬ弁舌に、少々冷や冷やもしましたが」

 四兵団が王都に集まっていたのは今年の予算案を審議していたからだった。代理として出席したリヴァイは、こういうことに興味はない。が、調査兵団が作成した予算案は、ほかの三兵団に比べて大幅に少なかったのである。
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