第4章 雨月
side O
走った
とにかく走った
走って走って、今
自分がどこにいるかも
わからない
こみあげてくる
吐き気と涙
どうにもならなくて
線路沿いのアンダーパスで
泣きながら吐いた
「うっ…う…うえっ…」
嗚咽なんだか、わからない声を出しながら。
どうして俺だけこんな目に遭うんだって。
どうして人は裏切るんだとか。
親ってなんなんだ
人ってなんなんだ
男ってなんなんだ
女ってなんなんだ
アンダーパスの中は。
昼間だと言うのに、オレンジ色の灯りがついてて。
鈍い灯りなのに、眩しい気がした。
「なんも…わかんねーよ…」
人が来る気配がしたから、慌てて顔を拭って。
また走り出した。
アンダーパスを出ると、人通りの多い通りに出た。
雑踏の中、闇雲に走るわけにもいかず。
しょうがないから、歩いた。
父さんがくれた金の余り。
ローファーとスニーカーを買ったけど、そんな高くなかったから、まだいっぱいある。
それからクレジットカード。
これがあればしばらく暮らせる。
どうせ父さんは俺のことなんか探すことなんてしないだろう。
事件でも起こしてやれば別だろうけど
「…もう…どーでもいい…」