第4章 雨月
ポケットから自分のスマホを取り出して、怒りで震える手でカバンの中から手帳を取り出した。
大野の父親の携帯番号を探し出し、電話を掛けた。
2コールで大野の父親が出た。
『もしもし、大野です』
「……櫻井です」
俺の声が聞こえたのか、大野の母親は叫ぶのをやめた。
急に静かになって、通話の音が鮮明に聞こえた。
『は?』
「智くんの担任の櫻井です」
『…ああ…昨日はどうも…携帯の番号なのでわかりませんでした。すいません、学校から何度もご連絡…』
「そんなことはどうだっていいんです」
『え?』
「今、ご自宅に伺っています」
怒りで、怒鳴りつけてしまいそうで。
なんとか感情を出さないよう、我慢して。
『自宅に…?』
「智くんは学校に今日こなかった。あなたの携帯も、ご自宅も電話が繋がらない。なにかあったのかと思って訪ねてきました」
『…智は…あの、妻は…』
大野の父親は、混乱しているようだった。
「…私が到着した時、マンションの入り口で家政婦さんが、呼び出しに誰も出ないと困っていました。なので、一緒に部屋に上がらせて貰いました」
『…部屋に…』
また、大野の母親が叫び始めた。
「ここから出せーーーーーーー智ーーーーーーっ…出せーーーーーっ」
その声に向かって、スマホを向けた。