第3章 薄月
目を開けたら…リビングの入口に、人影がふたつ見えた。
昨日の家政婦さんが、真っ青な顔をしてこっちを見てる。
もうひとりは…櫻井先生だった。
「大野っ…!聞こえるかっ!?」
「せん…せい…?」
先生は床に散らばってる食器の破片を避けながら、こっちに歩いてきた。
「…どうしたんだ…これは…強盗…?どういう…」
寝室からの声に気づいたようで、立ち止まってドアを凝視してる。
「ちょっと…これ…警察に…」
家政婦さんが真っ青になりながら、その場にへたり込んだ。
「落ち着いて!」
先生が家政婦さんへ怒鳴りつけるように言うと、俺の顔を見た。
「大野…これは、どういうことなんだ…?お父さんはどこへ行ったんだ…?」
頭が混乱して…
なんで、ここに先生が…?
「あ…勝手に入って済まなかった。今日、登校してこなかったから…何度か電話はしたんだが、誰も出ないし…お父さんも繋がらなかったんだ」
マンションに着いたら、家政婦さんが下で困ってて。
今日は在宅のはずなのに、誰も応答しないって…
何かあったかもしれないって、家政婦さんに母さんが預けてた鍵で中に入ってきたって…
先生が話してる間も、寝室で母さんは騒いでて。
何度も何度も、体当たりするような音も聞こえてきてる。
もう…
どうしたらいいのか、わからない