第3章 薄月
荷物を持って部屋を飛び出した。
リビングは、母さんが投げ飛ばしたもので足の踏み場も無くなってる。
それを避けて歩いてると、インターホンが鳴った。
モニターには昨日来てた家政婦さんが写ってた。
時計を見上げると、もう11時になってて…
「…どうしよう…」
とにかく今日は帰ってもらうしかない。
今は母さんは寝室で暴れてる。
家政婦さんに対応してる間、大人しくしておいてもらわないと、逃げられないと思った。
そっとドアを閉じて、ソファで出られないようブロックした。
その間、何度もインターホンは鳴っていたけど出られなくて。
作業が終わって、慌ててインターホンを通話状態にしたけど、画面には誰も写ってなかった。
諦めて帰ったのかな…
「智ーーーー!開けなさいっ…開けなさいよっ…!」
寝室のドアを激しく叩く音がする。
人間とは思えない声に、思わず両耳を塞いだ。
「もう…もう…やめてくれよ…」
ただ…ただ静かに…
普通に暮らしたいだけなのに
どうして…どうして…?
「…大野…?」
聞こえるはずのない、先生の声が聞こえた。
先生…ごめん…
父さん、嘘ついてた…
「大野っ…!無事か…!?」